四国説を考える上での前提
邪馬台国・四国説を考える上での前提を以下のページで紹介している。
こちらを予め読んでおいてほしい。
*邪馬台国「四国説」
その上で、今回は「四国・高知説」を紹介する。
邪馬台国は高知にあった
邪馬台国が高知にあったとする説としては、
土佐文雄『古神・巨石群の謎』(1983)リヨン社
が著名である。
これは、邪馬台国を高知の四国山上に張り巡らされたネットワーク都市だったとするものである。
つまり、四国全体を一つの「邪馬台国」として機能させるため、女王・卑弥呼が鬼道を用いて人心を結束させていたというもの。
高知や四国各地に残る巨石群は、そうした宗教的ネットワークの遺跡と考えられている。
四国・高知説の行程
邪馬台国を高知と考えた場合、魏志倭人伝の記述をどのように解釈できるだろうか?
北九州市周辺の不弥国に至るまでは、一般的な九州説・畿内説、その他の四国説と同様である。
その先の「南へ水行20日で投馬国に至る」「南へ水行10日、または陸行1ヶ月で女王の都・邪馬台国に至る」の解釈として、「高知」を女王国とすると下図のようなルートが考えられる。
ここでは、邪馬台国と同様、投馬国も「その他の四国説」で解説した方法をとる。
すなわち、投馬国は瀬戸内海の本州側、邪馬台国は四国側だったと考える方法である。
(詳細は*邪馬台国「四国説」を参照のこと)
もしくは、「邪馬台国・土佐説」を唱えている土佐文雄氏の論に準ずれば、投馬国は文字通り南進して、宮崎か鹿児島になる。
ここでは投馬国・宮崎説を採用して表示しておく。
その方が、邪馬台国に属していない「狗奴国」の位置を、鹿児島や熊本とみなせるからだ。
なお、土佐文雄氏は、不弥国を別府・大分市周辺とみて、鹿児島を投馬国としている。
四国説からみる邪馬台国・女王国の様子
多すぎる人口の解釈
3〜4世紀の世界にあって、邪馬台国の人口とされる7万戸(約30万人)を抱えられる場所は世界にもそんなに存在しない。
この7万戸にしても、数え方によっては50万人とする説もある。
投馬国にしても同様である。約5万戸(約20万〜30万人)というのは途方もない国である。
一方、魏志倭人伝を書いた魏の首都・洛陽の人口は約20万人。
この人口数は、邪馬台国や投馬国については、複数の都市を連合させ、合算したものと考えるのが自然であろう。
実際、魏志倭人伝の一般的な日本語訳では、この戸数については「推計値」であるとしている。
日本語訳:南へ水行20日で、投馬国に至る。長官は彌彌(みみ)、副官は彌彌那利(みみなり)である。推計5万戸余。南に水行10日と陸行1月で女王の都のある邪馬台国に至る。官に伊支馬(いきま)、弥馬升(みましょう)、弥馬獲支(みまかくき)、奴佳鞮(なかてい)があり、推計7万余戸。
つまり、投馬国と邪馬台国については、中国の使節団も実際に自分たちで戸数を把握したわけではなく、倭国の案内人から聞いたものと考えられる。
言い替えれば、使節団が戸数を把握できないほどの広範囲の領域を「投馬国」「邪馬台国」と倭人たちが呼んでいたのではないだろうか。
このことから、邪馬台国・四国説が提唱している「女王・卑弥呼によるカリスマ的ネットワークによって結束していた」というのは、可能性のあるものとして受け取れる。
一大率は瀬戸内海にいた
魏志倭人伝には、「女王国の北に一大率を置いて、諸国を監視していた」とある。
原文:自女王國以北、特置一大率、檢察諸國、諸國畏憚之、常治伊都國。
魏志倭人伝・日本語訳はウィキペディアによる
和訳:女王国より北に特に一大率という官が置かれ、諸国を検察し、諸国は之を畏れており、伊都国に常駐していた。
これについて高知説では、その他の四国説と同様「瀬戸内海」を監視できるところに一大率を置いていたと考えられるだろう。
その書き方からして、「邪馬台国を構成している女王国の、その北にある場所」と受け取れるような文章であり、そんなに遠く離れた場所ではないと思われる。
このことから、愛媛県東部から香川県あたりに置いていたのではないだろうか。
ここに普段は伊都国にいる一大率が、重要な仕事がある際はここまで出張してきたわけだ。
しかし、この説では四国山脈を越えた位置にあることから、「女王国の北」と呼べるほどの距離感ではない。
また、その仕事内容も、
日本語訳:倭王が魏の都や帯方郡、韓の国に使者を派遣したり、帯方郡の使者が倭国に遣わされた時は、いつも港に出向いて荷物の数目を調べ、送られる文書や賜り物が女王のもとに届いたとき、間違いがないように点検する。
というものであるから、女王国に届けられる荷物がここを通るというのも不思議である。
本来なら、高知県西部(宿毛市)がその任地として適任のようにも思われる。
なぜなら、邪馬台国・高知説の渡航ルートは、高知県西部だからだ。
一大率の派遣先の位置は、高知説では説明しにくい点と言える。
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